» サルデーニャ食文化の紹介
シリア難民の坊やが向かっていたのは地中海のコス島でした。
この島で生まれたのがコスレタス=ロメインレタスです。地中海のなかで、健康・長寿者の多い島として世界の4地域の一つであるサルデーニャ島ではどんな食生活をしているのか知りたくて、旅に出ました。
伊語ではSardegna、英語ではSardiniaで、日本語で夫々サルデーニャ、サルディニアとされることが多いようです。
サルデーニャ島は地中海で二番目に大きな島で、シチリア島より1,300㎡狭く四国とほぼ同じ大きさ、人口はシチリアの1/3足らずです。
先史時代のヌラーギNuraghiと呼ばれる高度な文明を持っていた先住民で知られ、その後は地中海覇権の要衝としてギリシャ人等に支配されてきましたが、海岸線は岩がちで入り組み、簡単には人を寄せ付けないこともあって長く独自性を保ち、あらゆる点でイタリア本土とは違う個性を持ち続け、それが魅力の島でもあります。
独自色の強い内陸部をドライブしていると羊の群れが道路を横断する間じっと待つことがあります。人より羊のほうがずっと多いこの島の品質保証は全て羊と羊乳製チーズです。
DOP(保護指定原産地表示)①ペコリーノ・サルドPecorino Sardo ②フィオーレ・サルドFiore sard
③ペコリーノ・ロマーノPecorino Romano・・・加熱すると風味が増す料理用チーズ
IGP(保護指定地域表示) ①アニェッロ・ディ・サルデーニャAgnello di Sardegna・・・1歳未満の子羊肉
州都カリアリCagliariから大平原の中でこぼこの高速フリーウェイを北上し、山間部のくねくね道を通って、バルバジアBarbagia(蛮族)と呼ばれる地域の街歩きをしました。
珍しい東洋人をじっと見つめる目がいくつもありましたが、頑固で忠実な感じはあるものの小説やエッセイにあるように怖いという感じはありませんでした。
1.アリッツォAritzoの壁絵(風刺や不満を含む) 2.オルゴゾロのカーニバル(10月中旬に開催)
車酔いで食欲が無くなるもトイレ休憩をしたくて昼にベルヴィBelviの街道沿いのバールに寄りました。
バルバジア風顔立ちの眉毛の濃い主人がカウンター越しに「何か食べる?」と英語で話しかけてくれて、すぐにできるものを丁寧に説明してくれ、素朴な味の簡単なパンとつまみ、飲み物を提供してくれました。
3.クレープと目の詰まったパン(+オリーブオイルで飛び切り美味) 4.チーズ、サラミ、ハム、特に濃いトマトが秀逸
島で最も標高の高いフォンニFonni(標高1000m)やいくつもの山と街を越え、ジェンナルジェントウGennargentu山の麓オリエナOliena=サルデーニャの中でもホスピタリティ溢れることで有名な村はずれのアグリツーリズモ(農家民宿)に滞在し、東洋人に対しても分け隔てのないもてなしと素朴な郷土料理、ハウスワインを楽しみました。
野菜料理が少なめなのがちょっと残念でしたが、しっかり育てた食材を手を抜かずに昔からの一番美味しい方法で調理してサービスしてもらえ、これぞ旅の醍醐味でした。
5.美しい山の麓のアグリツーリズモ(奥がジェンナルジェントウ山) 6.上が居室、下がワイン醸造所(芳醇な香の部屋)
7.中庭では優しい犬猫と戯れる 8.菜園にはレタスも(余り生育は良くない)
州都カリアリ、内陸部のアグリツーリズモ及び北西部のアルゲーロAlgheroに滞在し食事を楽しみました。
特筆すべきことに「多彩な小麦文化」があります。
良質な硬質小麦のセモリナ粉から作られる パーネ・カラザウ Pane Carasau は元々羊飼いが放牧に持って行く紙のような保存食ですが、料理に使うレシピもあり病みつきになる美味しさです。
もう一つがフレーグラ Fregulade で、クスクスに似た小粒パスタ、これは茹でてソースを絡めるものではなく、美味しい出汁に最初から入れて炊くもので、出汁が旨いほど美味しいフレーグラになります。
炊き込みご飯ならぬ「炊き込みパスタ」とも言えます。
マッロレッドゥスMalloreddusもこの地独特のショートパスタ、サフランで色と香り付けしたものです。
また生のペコリーノチーズを包んだラビオラもよく食されています。伝統菓子はこのラビオラを揚げて蜂蜜をかけたものセアダスSeadas、大きいのですが別腹、芳醇な味でぺろっと平らげてしまいます。
9.オリエナが発祥のパーネカラザウ 10.ムール貝スープ(これにパーネカラザウを浸して食べると秀逸)
11.魚介出汁で炊いたフレーグラ 12.野菜出汁で炊いたフレーグラ(農家で食べたこれはお薦め)
13.マッロレッドゥス(サフランで色と香り付け) 14.生ペコリーノチーズ入りラビオリ
15.前菜盛合せ(茄子が深みのある初めての味) 16.野菜の前菜(ピーマンが滋味深く忘れられぬ味)
肉は大地の味そのものでした。日本での豚肉はかなり改良されているのか、あまり臭みは感じませんが乳の香か皮の香か、羊よりも独特の獣の匂いがしました。それに比べて茹でただけの仔羊の食べやすいこと!
付け合せは殆どがじゃがいもですが、これも深い味でした。
17.乳飲み子豚の丸焼きカット(皮までいける) 18.茹でた仔羊(子豚より臭みが少ない)
19.牛・馬・豚・羊の焼肉盛合せ+手前トリッパ(皿はコルク) 20.朝食(牛乳よりヨーグルトが美味)
21.野生サボテンの実、フィコディンディアFico d'India 22.皮を剥いてデザートに(淡い甘さ、シチリアでも食す)
23.セアダス(サルデーニャのドルチェはこれ!) 24.ザクロの実が載ったムース
内陸の伝統的な料理は素朴で、オリジナルに忠実な昔からの家庭の味でした。
彼らはそれを「貧しい料理 Cucina Povera」と呼びますが、これが一番ということでした。
残念ながら、今回の外食ではロメインレタスを使った料理には出会えず、家庭ではどのように食べられているのかも分かりませんでした。蜂蜜を包むようにして食べることもあるとか。
この地域が健康・長寿と言われるのは、このような質素な食生活+運動+価値観からのように思いました。
肉は毎日食べているわけではなく、全粒粉のパンに豆と野菜、果物を主に羊乳から作られるペコリーノチーズ食べ、毎日1~2杯の赤ワインを飲み、更に牧羊で毎日よく歩き足腰を鍛えていることが効果を上げているのでしょう。
また長寿の秘訣は、この地域のホスピタリティからも覗えましたが、家族を大切にして互いに気遣い年長者を思いやり尊敬するという価値観だと思います。これらのやさしさが人々のストレスを軽減し、心の健康が長寿にも繋がってくるのでしょう。
一方、カリアリやアルゲーロなどの海に面した都市では豊かな海鮮料理を頂きました。
カリアリのリストランテでは秀逸な前菜8皿25ユーロだけで二人が満腹になりました。南イタリア、プーリア州の前菜も皿数が多いですが更に多く、でもマダムが親切にも「前菜を食べてから足りなければ次の皿を注文されますよう」とアドバイスを下さり、前菜だけでドルチェも頂かずに帰りました。コストパフォーマンスは最高でした。
25.カリアリ 海の幸前菜(第1,2皿)玉レタス使用 26.海の幸前菜(第3,4,5皿)
27.海の幸前菜(第6皿,カラスミにオイルをかける) 28.海の幸前菜(第7皿,白身魚3種)
29.海の幸前菜(第8皿、野菜のフリット、 30. 前菜(タコのカルパッチョは柔らかいが腰あり このリストランテは予約必至、再訪したいです。) 茹でる前にしっかり叩いてある感じでした。)
31.アルゲーロ 前菜(朝揚がった魚介類だけ扱う店) 32.海の幸プリモ1(量が多すぎてここらで満腹)
33.プリモ2. プリモ3.はイカ墨ラビオリ 34.セコンド1.の蒸し白身魚
35.セコンド2.いかのフリット、3.海老のソテー 36.郷土伝統肉料理の前菜(手前はレバー煮込み)前菜3皿+Ⅰが3皿+Ⅱが3皿+パン・ドルチェ食べ放題、
ワイン・水飲み放題=1人40€×2人、西洋人夫婦は完食!
37.サルデーニャの青空市場風景 38.公設市場風景(ロメインレタスが多い)
39.市場で買った野菜 5.6€ 40.アルゲーロのアパート内観(2LDK、2面バルコニー、洗濯機付)
41.アパートの向かい、伝統ある刑務所 42.人を寄せ付けない険しい海岸線、波も荒いが気も荒い?
43.カリアリの旧市街(下の駐車場から上る昇降機は全て故障中) 44.アルゲーロの旧市街夕景
番外編:RYANAIR乗り継ぎ待ちで滞在したヴェネツィアとパリの市場と食事
45.ヴェネツィア 運河の八百屋船 46.ヴェネツィア 海の幸前菜
47.市場のリーフレタス、株とバラ売り 48.市場のリーフレタス株 4€/Kg=1株1€弱
49.スーパーで買ったリーフレタス、1株0.74€ 50.パリ リヨン郷土料理の豆サラダ
51.パリ 日曜のビオマルシェ 52.マルシェで買ったレタス約1€(しみじみ美味しい)
53.マルシェ購入食材でアパートで作ったサラダ 54.生鮭のお皿(牡蠣と同じで体調悪いと・・・)
55.鴨肉・フォワグラパイ 56.豆と白身魚のレバー載せソテー
57..ワインの芳醇な香りに包まれたアグリツーリズモのバルコニーより 58.サルデーニャ内陸部のロマネスク教会
投稿日 : 2015年11月6日