イタリア人が「バカンス」を大切にするなら、シチリア人は「食」を大切にするとよく言われます。

中国にも通じるものがありますが、シチリア島の食も三千年の歴史に根ざしています。

 

肥沃な土壌はパレルモ近郊やエトナ火山の麓など一部だけで痩せた土地も多いのですが、強烈な太陽の恵みを受けて、人々の弛まぬ試行錯誤の結果か良質な食材が豊富な島です。

田舎料理から宮廷料理まで、多くのメニューがあり、かつて島国故に多くの外敵の支配下に落ちるも、その支配者の食文化の影響を享受しつつ、その歴史・文化を取り入れることで魅力的な島を作り上げた、並々ならぬ努力と生命力を感じます。

特にアラブによる支配の時代に新たな食材、漁法がもたらされ、食にとっての革新的時代となりました。
当時の完成されたイタリア料理法がフランスに持ち込まれ、今日の洗練されたフランス料理に繋がっています。

 

1505年に「カタリーナ・ディ・メディチのフランスお嫁入り」という書物が著され、その16章に下記があるとcolonnayumiさんのコラムにありました。

 

胃の中をゆっくり作動させる軽い食べ物は果物ならりんごか梨、野菜ならレタス、レタスは生のままでも良いし、オリーブ油とワインビネガーのかかったものでも良い」

レタスは当時からのお墨付きだと思うと嬉しくなります。

 

かのコラムには、9世紀ごろの将軍が野にあるフィノッキオ(ういきょう)を見つけ、兵士たちの食料にするべく料理人に試作を命じて生まれたのが、パスタ・コン・サルデ(鰯とういきょうとレーズン、松の実のパスタ)との記述もありました。

フィノッキオは外国人向けスーパーではよく見かけますが、魚の臭み消しに有効です。

 

パスタにふり掛けて食べるモリーカ(香草パン粉)はシチリア料理には欠かせないものです。
「貧乏人のチーズ」とも呼ばれ、貧しかった時代が窺われますが、各種の料理に上手く活かす知恵を感じます。

また、シチリアでは生うにのパスタがあり、日本との味覚の共通点もありました。

 

1.パスタ・コン・サルデ(左上にモリーカ)         2.生うにのパスタ

 1-043   006生うにパスタ

 

 漁業が盛んなこの島には、船乗りが好んで食べたカポナータという野菜料理があります。これを日本語に訳すと「なすの甘酢煮」、腐らないように酢を使い汁がなくなるように煮詰めた濃い味です。これもアラブの影響です。
アランチーニ(ライスコロッケ)もポピュラーで、おやつで食べたり、前菜の盛り合わせに載ります。

 

 3.カポナータ(右;煮詰まって甘酢味がきつい)  4.前菜盛り合わせ(中央にアランチーニ含む) 

 左は蛸サラダ                   フリルレタスが添えられています。

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詰め物をしたり巻いたり重ねる料理も多く、野菜のインボルティーニもよく食されています。

 

5.なすと海老・ツナの重ね焼き       6.インボルティーニ(パレルモのナポリという店)

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7.なす入りブジアーテのトラパニ風ソース    8.スペルト小麦(古代小麦)の 魚介サラダ   
 (トマトにペコリーノチーズ、アーモンド、バジリコの葉が入り美味)  (魚介の出汁を小麦が吸って美味)

  IMG_0365     スペルト小麦サラダ

 

魚介類が主になるのは当然で、前菜からメインのセコンドまで多くが魚料理です。

 

9.鰯フリットに蛸サラダ        10.熟成別のマグロ三種盛り(やや塩がきつい)
 日本でもありそうなメニューです。     スーパーでも各種売っていました。

  IMG_0362    熟成マグロ3種 

 

特に感動したのが魚介のクスクスです。シチリア最西端のトラパニでは千年前にアラブ人からもたらされたクスクスに魚介の煮込みスープをかけていただくのですが、このオリエンタルな味覚は日本人にとっては最高、むしゃぶりつく様に頂きました。

マグロのクスクスのスープ(マグロを煮込んだトマトスープ)に挑戦していますが、この味は難しくて!

 

11.マグロのクスクス(スープが濃厚で抜群) 12.魚介のクスクス(スープの色の違いに注目!)

    魚介のクスクス             IMG_0384

 

シチリア島は畜産、酪農も盛んで肉類、チーズもおいしく、かんきつ類も料理に欠かせません。

オレンジジュースの自動販売機では1€を入れるとオレンジ3個が上から下りてきてロボットの手のようなものでギュッと絞られて出て来ます。安い、旨い、早い。

 

13.牛肉のタリアータ(野菜もたっぷり)       14.羊の煮込み

  ナポリタリアータ   IMG_0374

 

15.海老とオレンジのサラダ      16.アグリツーリズモでリコッタチーズ調理中

 IMG_0400  オーナーによるリコッタチーズ製造

 

シチリア島西端のトラパニで日本人コーディネーターREIさんに「Wマンマの料理教室」を依頼しました。

小学校教師と小児科医のWマンマ(従姉妹同士)が自宅で平日の夕方から教えて下さり、マンマの手作り料理が一番美味しいことを再認識しました。その土地の食材で、風土に合った調理法が一番という気がしました。

 

イタリア中部の肉団子ではレモン皮を刻んで加えましたが、シチリアはアーモンド粉を入れます。
驚いたのは、肉団子の材料を合わせた段階でマンマが生肉を味見されたこと、赤身牛肉だから悪くはないのでしょうが、食に対する拘りは半端ではありません。

REIさんの通訳でずっとお喋りをしながら、食のみならず歴史や生活習慣まで、目から鱗のお話を伺いました。

 

17.ブジアーテ(手打ちパスタ)調理風景    18.ブジアーテのトラパニ風ソース

(バジリコ、赤ニンニク、トマト、アーモンド、ペコリーノチーズをすり潰してオリーブオイルと塩で調味)

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19.シチリア風ポルペッテ(肉団子)      20. カルチョーフィのパン粉蒸し煮

 どちらにもモリーカ(香草パン粉)が使われていて味をまろやかにしています。
 あくの強いカルチョーフィは下処理で捨てるところも多いですが、山菜の様な香りと深みのある味で、加工品とは段違いでした。鍋の中で動かないように、隙間にパンを詰めました。

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マフィアのイメージが強かったシチリアを好きになったのは、旅で出会った人々の優しさと食への探究心からでした。最初は一寸警戒されるものの打ち解けるとお節介なくらい気遣ってくれる人々です。

 

アグリツーリズモで食べ過ぎてきつい腹痛になり、田舎の大きな病院の救急外来に行ってみたら、丁寧に色々と診察・検査をしてくれ、生活指導までしてくれたのに診察代は無料でした。

病める者と貧しき者には施しをするのがイタリアなのかと思って調べたら、3年前は救急外来診療は無料で、公立病院は手続き書類が多いが私立は手続き簡単、必ずしも経済が豊かでは無さそうな国なのに・・・。私のパスポートを見て、福島の原発事故や広島の原爆のことまで「大変でしたね」と心配してくれたのには驚きました。

 

アグリツーリズモに帰ると結婚式が始まっていました。小柄なお婿さんだこととよく見ると女性、日本なら親は頭を抱えそうな状況も親類縁者集まり満面の喜び、司祭からパンをちぎってもらい皆で口に含み・・・。イタリア国内でも「田舎者」と見られることもあるでしょうに、皆さん包容力大でした。

3年後の今、この文化に関しては遅れている日本がやっと追いつきつつある状況になりました。

 

21.エリチェ山上よりトラパニを望む   22.ラグーザ旧市街とはるかシチリアの台地を望む

  エリチェ山上より  トラーパニを望む  ラグーザ

投稿日 : 2015年8月5日